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イエスの愛に生きた男ー三浦綾子 【塩狩峠】

小説を読んで涙が出たのは久しぶりだ。読み終えた後とても澄んだ気持ちになり、暖かい感動をくれた本がこの塩狩峠


物語のあらすじは以下のとおりである。以下はネタバレも含むので要注意。
キリスト教信者の母を持つ信夫は士族の家に生まれた背景もあり、最初は嫌キリスト教の感情を持ちながら育つのだが母の信仰や、そして何より親友の吉川の妹であるふじ子に心惹かれ彼女もまたキリスト教徒であったために、キリストへの関心を抱くようになる。
「なぜ生きるのか」「人は死んだらどうなるのか」父や祖母の急死をきっかけに信夫はこれらのことを深く考えるようになり、やがて自身もキリスト教の門を叩くようになる。
親友の吉川やその妹のこともあり、信夫は東京から北海道へと仕事の場を移していく。北海道では仕事を行う傍ら、日曜礼拝の説教師として教会にも奉仕し、聖書の言葉を日々の中で実践することで周囲の人々も自然と信夫に信頼を寄せていく。
また肺炎を患ったふじ子のお見舞いに通いながら二人は自然と心が結ばれていき、やがて信夫はこのふじ子の病気が治るのを待ち、お嫁にもらうことを望むようになる。

 


以下ネタバレ
 

ふじ子と結婚することを決意してからおよそ十年近くの歳月が流れ、奇跡的にふじ子の病が回復しいよいよ結納の日を迎えた日のことである。
ふじ子の結納のために札幌に向かう鉄道が塩狩峠を超えようとした時、信夫の乗っていた車両の連結部分が外れるという事故が発生。信夫は乗客を守るため自らレールに飛び降り自分の体を犠牲にして汽車を止めようとして列車の下敷きにったのである。イエスの愛を実践し、隣人のために死んでいったのであった。

言うは易く行うは難しというが、これほどまでにイエスの愛を実践し、自らを犠牲にする姿はやはり心打つものがある。
自分も他者のためにどこまで犠牲になれるかわからないし、まして命を落とせる自信もないのであるが、身近なところで他者に思いを寄せて尽くしていけるような人になりたいものだと思わされた。