国の盛衰は徴税システムにありー大村大次郎【お金の流れでわかる世界の歴史】
お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」
- 作者: 大村大次郎
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 中経出版
- 発売日: 2015/12/14
- メディア: Kindle版
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もともと世界史は大好きだったのだがだんだんと蓄積していたはずの知識が曖昧になり、断片的な世界史の知識をもう一度体系的に整えたいと考えていた矢先にこんな本を見つけた。単純な通史よりも何かもう少し焦点を絞った形で世界史を勉強しなおしたいと考えた。そんなニーズを満たしてくれたのがまさに本書、【お金の流れでわかる世界の歴史】 である。そういえば学生時代に世界史を勉強した際に通史とテーマ史といった区分で勉強をしていたことを思い出したが、本書はまさにお金というテーマから世界史をみていくテーマ史ともいえる。
興味深かった点は2つ。
一つ目は、国の盛衰はほとんどがその徴税システムに依拠しているという主張だ。徴税システムがしっかりと整って入れば国家は繁栄し、逆に仲介業者などによって民が搾取され、仲介業者が肥えて国にお金が集まらなくなれば国家は滅びていく。徴税システムに焦点を当てた世界史観は非常に面白かった。
二つ目はユダヤ人が富を蓄積するようになった理由を以下のように述べている点である。
- 放浪するということは、各地域の情報をたくさん持っているということである。また、世界各地に同朋がいるのだから、ネットワークをつくりやすい。ユダヤの商法にとって、この世界的ネットワークが欠くべからざる武器となっているのだ。
- ユダヤ人は、お金を道具と考え、お金そのものを汚いとは思わない。
- 土地を持たないユダヤ人にとって、お金こそが命をつなぐ道具でもある。
- カール・マルクスは、「ユダヤ人の思考を具現化したのが資本主義」だと語っている。
私はユダヤの歴史や文化に関心があるので、財政に長じていたユダヤ人を擁護するかあるいは追い出すかが国家の盛衰に影響を与えたという歴史の捉え方は興味深かった。
通史をもう一度行いたい人やお金の流れを歴史で学びたい人など様々な人を対象に楽しませてくれる1冊である。