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教育行政官という視点から見た国際教育協力の現場と課題ー小松太郎 【教育で平和をつくるー国際教育協力のしごと】

 

教育で平和をつくる―国際教育協力のしごと (岩波ジュニア新書)

教育で平和をつくる―国際教育協力のしごと (岩波ジュニア新書)

 

 私の専門分野となる国際教育協力分野において先駆けて実務および研究の実績を積んできた著者が、特に赴任地でだったコソボでの経験を、教育行政官という視点から語っていく。

本書巻末に述べられているように、初等教育を十分に受けられない子どもの半分の子どもが紛争地域の子どもたちである。そのような環境に置かれている子どもたちのためにどのような教育環境を整備していくかが紛争地域の教育においては極めて重要で、それは必然的に平和教育と結びついていく。

本書では一つの地域に複数の民族や異なる宗教を持つ人たちが住み、互いに憎しみ合い、時に紛争を引き起こす環境の中で、 未来を担っていく子どもたちへ施される教育の重要性がひしひしと伝わってくる。
筆者の体験が語られているので、多民族国家間での国際教育協力における課題とその問題解決の難しさまでリアルに伝わってくる。

最終章では同じ国際開発という分野であっても研究者と実務家とに役割を分けることができ、その違いを分かりやすく述べている。両者はどちらが重要か、というものではなくどちらも必要なものであり、研究者として研究した内容が現場において必要とされるものであったり、逆に実務家としての経験が研究をより深いものにするといったように相互に重要であることが述べられており、私の考えと共感するものがあった。

国際協力師としての仕事内容を具体的に示してくれている一冊だ。