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4人の友達から裏切られた理由とは-村上春樹【色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年】

村上春樹の長編小説は「ノルウェーの森」「1Q84」「アフターダーク」に続いて4作目。まだまだハルキストと呼ぶには程遠いレベルだが、今回の「色彩~」は個人的には春樹の作品で一番好きだった。

主人公の多崎つくるは大学2年の時にただ死ぬことだけを考えていたが、結局死ねず卒業後に鉄道会社に就職した。その後月日は流れ30代後半を迎えたつくるは2つ年上の木元沙羅と交際する。
つくるが高校時代に付き合っていた4人の友達から裏切られた話を沙羅に話すと、彼女はその真相を突き止めるために彼らに直接会って話を聞くことを勧める。こうしてつくるの20年近く閉じ込めてきた想いは彼の巡礼とともに変化していく。
 
村上春樹の作品は様々な読み方ができることが魅力の一つだ。
作品のいたるところに散りばめられた訓示、価値観に対する疑問符、推理的要素など決してシンプルな作品ではない。
それでいて表面的な読み方もできるので小説読み始めの初心者からインテリ層まで幅広い読者層を得ているのだと思う。
「色彩~」に関してはこの本のためだけの解説本なるものも出ているぐらいに奥が深く、どういう読み方が正解なのかははっきりと言えない。
ただ個人的にこの{色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は推理小説である}というサイトは一番説得力もあったし論理的で明快な解釈だと思うのだ一読の価値はある。
 
本書を読み終えた後、果たして自分は色彩を持っているのだろうか。もしそうならそれは何色なのだろうかと、ふと考えたりもした。