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なぜのび太はしずかちゃんと結婚できたのかーダニエル・ゴールマン【EQ 心の知能指数】

軽い気持ちで読んでみたけど、なんともお堅い心理学の本でした。EQとはEmotionally Intelligence Quotientの略で日本語にすると「心の知能指数」という意味ですが、この本ではそういったEQの概念やEQの重要性を沢山の事例で紹介しています。本書では、人生で成功するためにはIQだけでなくEQ(例えば人に共感することであったり自分の感情を表現する方法であったり)の高さが不可欠だという導入から入っていきますが、個人的にはEQ教育についての部分が興味を引きました。

 

例えばこんな研究事例があります。

 
四歳の子供を対象に実験者が次のように言う。「ちょっとお使いに行ってくるからね。おじさんが戻ってくるまで待っててくれたら、ごほうびにこのマシュマロをふたつあげる。でも、それまで待てなかったら、ここにあるマシュマロひとつだけだよ。そのかわり、今すぐ食べてもいいけどね」このうち何人かは実験者が戻ってくるまで食べずに我慢し、また何人かは、特により衝動的な子供たちは目の前のー個のマシュマロに手をのばした。しかもほとんどの場合、実験者が「お使いに行く」ために部屋を出た直後に。その後、四歳のときに誘惑に耐えることのできた子は、青年となった時点でより高い社会性を身に付けていた。対人能力にすぐれ、きちんと自己主張ができ、人生の難局に適切に対処できる力がついていた。少々のストレスで破綻したり行き詰まったり後退したりせず、プレッシャーにさらされても狼狽したり混乱したりすることが少ない。困難な課題にもすすんで立ち向かい、難しそうだからといって投げ出したりしない。自分に自信を持ち、信頼に足る誠実さを持ち合わせている。いろいろなプロジェクトに率先して参加する。そしてマシュマロ・テストから十年以上経過した時点でも、目標を達成するために欲求の充足を先へ延ばすことができた。 
しかし、マシュマロにすぐ手をのばした三分の一くらいの子供たちにはこのような長所がそれほど認められず、反対に心理的に問題の多い姿が浮かびあがってきた。青年期を迎えた彼らは対人関係を避けようとする姿勢が目立ち、強情な半面優柔不断で、小さな挫折にも心の動揺を見せる。自分自身のことを「だめ」な人間、あるいは無価値な人間と考える傾向がある。ストレスを受けると動けなくなったり後退しやすい。疑い深く、自分が「恵まれていない」ことを恨み、嫉妬心を抱きやすい。感情の起伏が激しくいらだつと過激に反応しやすいので、言い合いやけんかになりやすい。そして、七年あまりの歳月を経てもやはり彼らは欲求の充足を先へ延ばすことができなかった。(中略) さらに驚くべきことに、高校を卒業する時点でマシュマロ・テストの子供たちをふたたび評価してみたところ、四歳のときに忍耐づよく待つことのできた子供は、そうでない子供と比較して、学業の面でもはるかに優秀なことがわかった。
 
ここで大事なのはEQは教育することができるということ。そしてEQの教育は早ければ早いほど良いということです。親が子どもに施す教育の中で、知識面以上に、こういったEQを育ててあげることが一番大切なのではないかと感じました。家庭教育の重要点がそこにあるように思えました。
 
しかし子どものEQを高められる親は、その親自体がEQが高いと言えるし、すべての家庭が子どものEQを満足に高められるとは限らず、必然的に学校でのEQ教育が必要になってきます。
日本だとEQに関する認識がまだまだ弱いので、既存の科目の中で子どものEQを高めてあげられる授業が今後さらに求められてくるのだと思います。ち
 
なみに余談ですが、「ドラえもん学」なるものを研究している富山大学の横山泰行教授はのびたがしずかちゃんと結婚できた理由をEQを使って説明しています。のびたは知っての通り運動も勉強もダメなのに、しずかちゃんと結婚できた。それは彼のEQがとても高かったから。相手を思いやる心、相手に共感でできることなど、対人関係で欠かせない要素がのびたにはしっかり備わっている。一方、運動も勉強も万能な出来杉君は、IQは抜群に高いのにEQが低い傾向にあった。
人の痛みや苦労を中々共感してあげることができないのだ。例えばジャイアンやスネオが宿題が山のように出されて困っているところに、出来杉はさらっと「あんなの5分もあればできる」と言ってのける。
それに感心する彼らを前に、出来杉は「こんなこと大したことないよ」と言い放って去っていく。結局しずかちゃんはそんな出来杉よりもEQに優れたのびたを選んで結婚した、という話。
 
EQを面白く説明している部分だと思います。